書評 25.『九月の四分の一』「九月の四分の一」 大崎善生著 新潮社 2003年4月24日発行 同性、異性、年齢の上下。出会いから親交が深まるまでの間、相手との関係がどのような形に進展するのかを左右する要素はいくつもあります。複数の要素のうち、より多くの要素が満たされたからといって人間関係が深まるとは限りません。共通点にしろ相違点にし... 2025.06.29 書評
書評 24.『僕が電話をかけている場所』 レイモンド・カーヴァー著 村上春樹訳 中公文庫 昭和63年7月20日10版 短編集です。この文章を書くために私が手元に置いているのは文庫版ですが、巻末には訳者である村上春樹によるあとがきが付されています。これによると、カーヴァーは純粋な短編作家であり詩人です。長編よりも短い文章で読み手の心を揺さぶる力に優れた作家で... 2025.06.23 書評
書評 23.『火車』 宮部みゆき著 新潮文庫 平成22年11月15日第66刷 『火車』は、1992年7月に双葉社より刊行された作品です。現在私の手元にあるのは、1998年に新潮社から出された文庫版なので、出版社名の欄に新潮文庫と書きました。1992年にしろ1998年にしろ、ひと昔を十年と考えると、『火車』はふた昔前の... 2025.06.08 書評
書評 22.『ホテルローヤル』 桜木紫乃著 集英社 2013年8月14日第6刷 第149回直木賞受賞作です。芥川賞または直木賞受賞作だからといって、すぐに作品を手に取って読むという習慣が私にはありません。むしろしばらく時間が経って、ある種の熱が冷めてから読むことにしています。なぜなら何らかの賞を受けた作品だとの先入観か... 2025.05.29 書評
書評 21.『ルリユールおじさん』 いせひでこ著 理論社 2007年3月第4刷発行 今まで秘密にしていましたが、実は、私は大の絵本好きです。 絵本と言えば文章と絵とが併存する書物です。作者の意図や作品そのものによって異なることですが、それは決して子どものためだけに書かれたものではないと私は思っています。何かの拍子に絵本を読... 2025.05.15 書評
書評 20.『放課後の音符(キーノート)』「Keynote」 山田詠美著 新潮社 1989年10月10日発行 先日、仕事を通じて知り合った方と三年ぶりに再会しました。まるで地球を周回する彗星のように、概ね三年を周期とした再会を繰り返すこと四回。彼女とはかれこれ十年を超えるお付き合いです。勝手ながら、もう友人と呼ばせていただいても差し支えないと思って... 2025.05.09 書評
書評 19.『ノックの音が』 星新一著 新潮文庫 平成26年6月10日30刷 同じ目的を果たすために、取ることができる方法にはいくつかあります。 例えば相手に文書を送るためには、手紙やメールという方法が考えられます。私は仕事上、毎日のように誰かとメールの遣り取りをしています。パソコンでメールを打つ際にはキーボードを使... 2025.05.04 書評
書評 18.『赤毛のアン』 モンゴメリ著 村岡花子訳 新潮文庫 平成20年6月15日3刷 数年前、私は県内の中学校を訪ねる仕事に多くの時間を割いた時期がありました。地図上でその日に訪ねた中学校の位置を線で結んでみると、大小様々な図形を描くことができます。その移動距離が最も長かった日には、車の走行距離が360キロメートルを数えまし... 2025.04.25 書評
書評 17.『新編宮沢賢治詩集』 天沢退二郎編 新潮社文庫 平成16年3月25日29刷 小説、詩、エッセイ。どの形態をとっても、文章の書き出しは難しいものです。書き出し、あるいは最初の一文で、その文章に対する読み手の態度が大方決まってしまうと言っても差し支えないでしょう。この理由から、読み手を自分の文章の中に引きずり込みたいと... 2025.04.20 書評
書評 16.『夢十夜・草枕』「夢十夜」 夏目漱石著 集英社文庫 2009年8月8日第15刷 夏目漱石の作品に関する研究成果は膨大な数にのぼります。そのため、ある作品についてどのような論考が成されているのかを調べるだけでも、相当の労力を要します。大学の文学部に属する学生が書いたものや、趣味で論考を手掛けている方々の記述まで合わせると... 2025.04.04 書評