書評

36.『乳と卵』 川上未映子著 文藝春秋 2008年2月25日第1刷

2007(平成19)年下半期、第138回芥川賞受賞作です。 皆さんは何を参考にして本の購入を決意するでしょうか。例えば、芥川賞や直木賞といった著名な文学賞の受賞作は必ず購入すると決めている方がいるかもしれません。また、雑誌に限らず新聞などで...
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35.『スプートニクの恋人』 村上春樹著 講談社 1999年4月25日第2刷

登場人物3人の行動を柱として描かれた物語です。すみれは大学の文芸科に籍を置く作家志望の女性です。彼女は17歳年上の既婚女性であるミュウと出会います。ミュウは自分の名前でコンサートを開くことができるようなピアニストになることを目指して邁進して...
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34.『国境の南、太陽の西』 村上春樹著 講談社 1992年10月26日第3刷

人生には選択する余地がないものがあります。例えば、親です。子どもは親を選んで生まれてくることができません。そこには運命としか言いようのない、必然なのか偶然なのかよく分からない力が働いて、結果だけがもたらされます。その他にも選択する余地がない...
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33.『ノルウェイの森』 村上春樹著 講談社 上・1988年12月24日第28刷、下・1988年8月24日第21刷

私はこれまで、意識的に村上春樹の作品を紹介することを避けてきました。その理由は、村上春樹の作品には他の作家よりも多くの熱狂的な支持者が存在するうえ、執筆活動を継続している作家でありながら、その作品に対する評論や研究書があまりに多く存在するか...
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32.『切羽へ』 井上荒野著 新潮社 2008年9月15日4刷

これまでに書いてきた本の紹介を読んでくださった方々はもうお気づきのことと思いますが、私は気に入った本を何度も読み返すタイプの読書好きです。もちろん出版されたばかりの本も読みますが、このブログで本の紹介をすることになってからというもの、かつて...
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31.『子うさぎましろのお話』 ぶん・ささきたづ、え・みよしせきや ポプラ社 昭和52年1月30日13版

クリスマスイブの夜、皆さんはどう過ごすでしょうか。クリスマスを祝う風習はもともと日本にはなかったものですが、今ではすっかり日本人の生活に溶けこんでいるように思えます。その在り方には様々な考え方があるようです。翌日のキリストの誕生は喜ばしいこ...
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30.『中陰の花』 玄侑宗久著 文藝春秋 平成20年3月1日第15刷

人が寄り集まって話をする際、会話が盛り上がる話題のひとつに怪談や霊的体験談があります。日々の生活には喜怒哀楽がつきものですが、不可思議なものに対する恐れもまた、私たちの心を揺さぶる感情のうちのひとつです。この恐怖心に対するアプローチとして、...
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29.『峠』(上・中・下) 司馬遼太郎著 新潮文庫 上・平成16年9月20日4刷、中・平成16年9月5日4刷、下・16年9月30日4刷

歴史小説は史実に作者なりの解釈を加えて登場人物に人格を与え、その登場人物の目を介した時代や地域を切り取って読者に提示したものです。戦国時代なら戦国時代、幕末なら幕末といった時の流れの中に登場人物を立たせ、その生き様から読者の心を動かしにかか...
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28.『注文の多い料理店』「雪渡り」 宮澤賢治著 新潮文庫 平成16年5月20日29刷

この文庫本の巻末に付された天沢二郎の手になる「収録作品について」によれば、『イーハト-ブ童話 注文の多い料理店 宮澤賢治著』は、1924(大正13)年12月1日、盛岡市の近森善一を発行者、発行者と同住所の「杜陵出版部」と東京の「光原社」とを...
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27.『おおきな木』 シェル=シルヴァスタイン著 村上春樹訳 あすなろ書房 2010年9月30日4刷発行

奥付には「Copyright1964」とあり、この年に出版されていることが分かります。村上春樹の訳によりあすなろ書房から本書が出版されたのが2010年なので、40年以上の長きにわたって世界中の人々に読み継がれてきた作品であることがうかがい知...