『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第四章「牡丹雪」A5

「このように書きます。先ほど桜田さんにお話ししたように、圧倒的な力に支配され、逃げることができない状況に置かれた子どもに何が出来るか」 藤本の問いに、今度は桜田が答えた。「大人との苦痛をともなう関係から逃げることのできる唯一の方法は、心理的...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第四章「牡丹雪」A4

「いや、今日はもう帰った方がいい。またあらためて話を聞きに来よう」 倉科の声に、桜田が薄く眼を開いた。桜田は倉科に視線を流すと、小さくも確かな声でこの場を継続させる希望を口にした。「だめ。最後まで話を聞かせて。本当に大丈夫」「こういうことは...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第四章「牡丹雪」A3

「ゴリラは椿さんの腕を掴んで彼女を引きずり、彼女自身のベッドまで運びました」 背中を丸めて痛みに耐えている椿の両手を準備していたロープでベッドの手すりに縛りつけ、自由を奪ったうえで身に着けていたものを乱暴にはぎとっていった。椿がもがくと、ま...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第四章「牡丹雪」A2

数カ月後には、真理亜は六本木にあるタヌキ名義のマンションを預かり、椿と二人で住むことになった。近い将来には、マンションを自分の名義に書き換えさせることが可能だと思えた。また、経済的に安定した生活と、将来を保証することができるだけの教育を娘に...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第四章「牡丹雪」A1

二〇〇六年、夏。藤本との信頼関係を築くことができたからか、クリニックに通いはじめて一年が過ぎたこのころから、椿はようやく様々なことを話すようになった。それでも、自分自身のことについて話すことはほとんどなかった。 椿は自身のことを話す代わりに...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第三章「八朔の雪」B8

「川村椿の場合も、その例え話の子どものような状態だったんですか?」「はい。自分を消す能力を身につけていたという点では同じでした」「ここではいつぐらいから話すことができるようになったのでしょう?」「ちょっと待ってくださいね」藤本はカルテに視線...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第三章「八朔の雪」B7

◆ 翌日、藤本メンタルクリニックで川村椿の足跡をたどろうとする倉科の行動を掴むことができたのは、まさに尾行の賜物だ。しかし、桜田はなお釈然としない。 倉科が、川村椿の足跡をたどる理由を明らかにしない。だからこそ、桜田にはこの事件の概要が見え...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第三章「八朔の雪」B6

倉科は東京に戻った椿が新たに通うようになった高校との間で、転校の手続きを行った。その過程で椿が身を寄せた施設、花庵の名前と所在地を知り得た。施設に電話で確認を取ったところ、彼はつい最近、わざわざ休日を使って直接その地に足を運び、高橋という施...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第三章「八朔の雪」B5

桜田は、弘前市内の病院の精神科に入院している葉子のもとを訪ね、彼女から聞き知った内容を倉科に伝えた。熱いアイロンを押しつけられた火傷の傷は多数。骨折した個所は繋ぎ目が盛り上がるものだが、レントゲン写真を撮れば肋骨に複数個所その痕跡が認められ...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第三章「八朔の雪」B4

児童相談所を通じて手続きを進める場合、養子を受け入れることを希望する夫婦は、まず自治体に『養子縁組里親』として登録する必要がある。登録にあたり児童相談所は、夫婦が子どもを育てるのに適切な人物かどうかを判断する。個別面談だけでなく、すでに養親...