2025-01

小説

『明日の私』第8章「合宿」(3)

柏木もふくめた五人がグローブを手にすると、それぞれが暗黙のうちに数歩下がった。ほどよい距離をとった五角形ができあがった。保奈美だけが体育館前の階段の一番下の段に腰を下ろして、皆の様子を眺めたいる。それだけで楽しそうに見えた。「じゃあ、いくぞ...
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『明日の私』第8章「合宿」(2)

「せっかくの休みにわざわざ合宿につきあってやってるんだから、しっかり勉強しろよ。どれ、俺もしばらくここにいようかな」 柏木はそう言って、自分も大広間の一画に別のテーブルを据えた。ノート型のパソコンを開いて何やら仕事を始めた。 『秘密クラブ』...
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『明日の私』第8章「合宿」(1)

盆明け、八月十九日の夕方から二十日の午後にかけて、合宿所で番外編『秘密クラブ』が開かれた。実家で盆を過ごすために帰省していた柏木が戻るのを待ってのことだった。職員室とは違って、合宿所にはエアコンがない。夕方から始めるのは、昼間の暑さを避けて...
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『明日の私』第8章「写真」(6)

私が食卓の端に置かれた新聞に手をのばすと、その下から一ページにL判の写真が二枚並ぶアルバムが姿を現した。私にとって見慣れたものだ。写真が趣味の一つだった父親にとって、美智子と私は格好の被写体だった。それぞれの誕生日やクリスマスといった家族の...
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『明日の私』第8章「写真」(5)

買い物をして家に帰った。 七時十分前。美智子が帰ってくるまでにはまだ時間がある。私は手早く食事の準備にとりかかった。人間は環境に慣れる生き物なのだとつくづく思う。時間に追われてあたふたとこなしていた家事が、時間に合わせて当たり前のようにこな...