2026-01

『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第一章「早雪」A3

◆ 二月二十日、月曜日。倉科は職員室の書棚から、六年前、二〇〇六年のファイルを取り出した。 担任教師として仕事を始めた当初から、年度ごとに自分が関わったすべての生徒たちの情報を紙に落としてファイリングしていた。世の中、何が起こるか分からない...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第一章「早雪」A2

倉科は息を呑んだ。 記憶の中の、達樹の虚ろな目がこちらを見ていた。体に突き刺さったナイフによる痛みで、その顔が歪む光景が脳裡に浮かんだ。 言葉を発しない倉科に業を煮やしたのか、桜田がさらに言葉を重ねた。「どんな生徒でしたか?」「簡単には話せ...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』第一章「早雪」A1

「夕方、本庁から電話があったの。またかけ直すって言ってたけど、心当たりはある?」 帰宅の挨拶を交すなり、妻の環たまきの報告を聞く。 本庁。ついそんな言い方をしてしまう環を、倉科は笑った。環もつられたように笑った。「本庁はないだろ。警察って言...
『永遠の花嫁』

『永遠の花嫁』「序章」

凡例:本ブログに掲載するにあたり、以下のように設定した。・この物語は「倉科」の視点から語られるsideAと、「桜田」の視点から語られるsideBに分かれ、交互に編まれている。同じ章内のsideAとsideBは、対を成す構造になっている。・A...
書評

47.『蜘蛛の糸・杜子春』「トロッコ」 芥川龍之介著 新潮社 平成5年5月15日51刷

皆さんは年若いころに読んだ物語が、年を経た後の再読によってまったく別の物語のように感じたことがあるでしょうか。その物語に初めて接したときの年齢はもちろんのこと、再読までに空いた期間もまた、感じ方を変える要素になります。それは読者が積み重ねて...
書評

46.『その女アレックス』 ピエール・ルメートル著 橘明美訳 文春文庫 2015年4月10日第14刷

久しぶりに犯罪小説、あるいは推理小説を読みました。ひところはこの種の小説を続けざまに読んでいましたが、ここしばらくは手に取ることがありませんでした。その理由を今回の読書経験を踏まえて自分なりに考えてみました。その結果、作品の中に頻繁に登場す...
書評

45.『最後の喫煙者 自薦ドタバタ傑作集1』「最後の喫煙者」 筒井康隆著 新潮社 平成27年5月25日19刷

2026年が始まりました。今年は時々立ち止まって周囲を見渡す余裕を持ちつつ、新い道を切り拓くことを厭わない1年にしたいと思っています。歩みを進める際、どのようなテンポやリズム、速度を取るかという点はとても重要です。時には物事の成否を分けるほ...