夏休み明け、九月、十月、十一月は、爽秋と秋麗と菊花に心を和ませることすら忘れ、駆け込むように十一月の半ばを迎えた。
一般推薦の試験日、私は自分で定めた時間通りに家を出た。すっきりと晴れわたった霜枯れの空の下を歩きだした。
間もなくまた冬を迎えようとする街の木々はすでに葉を散らせ、青空を背景に黒い骨格だけを浮かび上がらせていた。
北国の秋は短い。
つい先日まで赤や黄に色づいた落ち葉が街路をおおっていたというのに、どこへ行ってしまったのか、今はすっかりその姿を消していた。
それに代わって登場するものは、何もない。あとは雪を待つばかりだ。二、三日前には、『津軽長寿園』に向かう道すがら、夕焼けのなかを頼りなく飛び交う雪虫に出くわした。自転車を歩道に停めて、その虫の飛び行く先にそっと手をのばした。避けようともとどまろうともせず、ただゆるゆると私の手の平に着地したその虫の、白くふわふわとした綿の尻に指先で触れた。そして、冬の到来を思った。
『明日の私』最終章「明日の私」(1)
