小説 『明日の私』最終章「明日の私」(2) 試験会場までは、バスの停留所で七つ分の距離だ。私は時間的に十分な余裕をもって会場まで歩くことを選んだ。凛と澄んだ、ちりちりと頬を刺す冷気の中に吐き出す息は、つい先日までよりもずっと白さを増していた。 この二年間、状況だけを並べ挙げれば、幸せ... 2025.02.25 小説
小説 『明日の私』最終章「明日の私」(1) 夏休み明け、九月、十月、十一月は、爽秋と秋麗と菊花に心を和ませることすら忘れ、駆け込むように十一月の半ばを迎えた。 一般推薦の試験日、私は自分で定めた時間通りに家を出た。すっきりと晴れわたった霜枯れの空の下を歩きだした。 間もなくまた冬を迎... 2025.02.22 小説