小説 百日紅13 父は春を待った。 母と兄と姉、そして優斗。薄紅色の桜が香るなかを家族四人で歩いた。父が作ってくれた機会ではあるものの、ここに彼自身はいない。 寺の門をくぐる。左右の門柱の脇には、それぞれに立派な杉がそびえている。毎年、盆のころには降りそそぐ... 2024.08.31 小説