掌編小説

掌編小説

朝顔

七月下旬の砂利道は白く乾いていた。 時折肌を撫でるように寄せる風は細かな砂をはらみ、わたしのむきだしの足をうすく汚した。 晴れわたる空から照りつける陽光が、じりじりと肌を灼やき続けている。 ランドセルと背中の間で汗に濡れた服が肌に貼りつく。...
掌編小説

坂の街

玄関の施錠を解くために鍵が入っているはずのポケットに手を入れようとしたが、学校から鉢植えの朝顔をもって帰ってきていることに気がついた。 盛りのころを過ぎ、枯れかかった蔓の付け根に種の入った実がいくつもついている。それを玄関の脇に置き、引き戸...
掌編小説

六月の風は

六月の風は緑色に薫かおる。 梅雨前線は関東南部で停滞しているものの、その日の朝の天気予報によれば翌日にでも東北南部にまで北上する見通しだ。梅雨をむかえるのは各地ともほぼ例年通りだとも伝えられている。それまでの二、三日は、初夏の乾いた風を楽し...
掌編小説

ちょっとだけ意地悪を

時世もあり、十とお以上も離れた同僚と酒を飲むことはなくなった。 かつては酒を飲んでこそ話せることもあると思っていた。しかし、日常では話せないことをアルコールの勢いを借りて話しても、ろくな結果になるはずがない。この事実に気がついてからは、酒の...